思えば遠く来たものだ。


 ぼくがこの、曲がりくねった冒険の旅路を歩むようになった始まりは、あの頭の中に響くポーラの声がきっかけだったように思える。そしてぼくは訳も分からず、わき目も降らずに、無我夢中で歩き続けてきた。
 その選択が果たして良かったのかどうかぼくには分からない。ただ、ひとつだけ確かなのは、その大きな「流れ」というべきか――ぼくやぼくらのまったく知らないところで動いている何か大きな、一種“運命”のようなものが、確かに存在している、ということだ。しかもそれは明らかに(少なくともぼくにとって)、少しずつ少しずつ良くない方向へと進んでいっている。
 その大きな流れ、いや“物語”と言っていいかも知れない「それ」は、本来ならば、3人の少年たちと1人の少女による愛と勇気と希望のボーイ・ミーツ・ガールストーリー、で終わるはずだったかもしれない。でなければ、はたまた人々にどこかしら懐かしさのようなものを感じさせる、まだなにも知らない純粋無垢な少年たちのスタンド・バイ・ミーストーリーだったのかもしれない。でも(少なくともぼくにとって)、この物語は明らかにどこかしら歪んでいるように思える。どこかが少しずつ少しずつ崩れ始めてしまっているような、嫌悪感と微弱な恐怖の交じり合った、グロテスクな物語。
 そう、もしかしたら、それこそが「ギーグ」なのかもしれない。
 だとしたら、ぼくたちはとんでもなく強大な敵と戦おうとしているのだろう。そしてもし、もし、それをぼくたちがぶち壊したとすると、そのときは一体、この「物語」はどうなってしまうのだろう。そんなことはぼくには分からない。でも、ぼく達はただその大きな物語、大きなうねりの中に身をゆだねる他ないのだ。ぼく達が行動を起こそうとしてもしなくても、勝手に事態は自動的に進んでいってしまうのだ。だからぼくにできるのは、ただあがくことだけだ。流れの早い大きな河の中で、懸命にもがき続けるしかないのだ。
 幸い、ぼくには仲間がいる。ちょっと抜けた発言や行動は多いけど、いざとなったら本当に頼りになるネスがいる。しっかり者でちょっと口うるさくて、でも本当はものすごく優しくて仲間思いなポーラがいる。そしてもう1人、まだ会ったことのない4人目の仲間もいる。

 コーヒーを飲みおえたら、また冒険は始まる。
 広大な砂漠をぬけて、大都会フォーサイドへとぼくたちは向かう。
 
 そして、ぼくは夢を見る。終わりのない夢、永遠に続く夢を。

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