空を仰ぐと、雲ひとつない高い青空が広がっていた。さんさんと輝く太陽が、砂浜と僕たち3人をじりじりと照らしつけている。このぐらいの暑さならドコドコ砂漠のほうがはるかに暑かったけど、状況的にはこちらの方が圧倒的に悪い。
「……うそつき」
「べつに嘘はついてないだろ」とジェフが言い返す。
「だって、『今度は大丈夫だ』って言ってたじゃねーか!」
「正確には『今度は……たぶん……壊れないと思う』って言ったんだよ。『絶対に』じゃなくて『多分そうだと思う』だろ? ほら、嘘は言ってないじゃいたたたたた」
 僕はジェフのほっぺたを両手で引き伸ばす。
「……お前ら親子って、前世は詐欺師か何かだろ絶対」
「もういいじゃない、サマーズに着いたは着いたんだから」と、横でポーラが言った。スカイウォーカーの残骸の横で腰を下ろし、その鉄の塊をぺたぺたと触っている。「どうするの? とりあえずホテルかどこかにチェックインしないと」
「そ、そうだよネス。過ぎたことよりもっと先の事を考えようよ、これからのことをさ」
「お前が言うな!」
「ほら、さっさと気持ちを切り替えるの。目先のことばっかり考えてるから男の子は単純だとか言われちゃうのよ」
 ……2人で責めてくるなんて反則だぞ。
「分かったらさっさと歩く。まったく、いつまでもグチグチしてるんだからもう……」
 そう言ってポーラは立ち上がると、ジェフと一緒にすたすたと浜辺を歩き出した。
 え、ていうかこのスカイウォーカーの残骸はいったいどうするんだよ。マジかよ。放置かよ。お母さんから自分で散らかしたものは自分で片付けなさいって言われなかったのか。
「……ってあー、ちょっと待ってってば! 置いてくなよー!」
「ネスが遅いのよ!」
 僕は赤いキャップをかぶり直し、ズッシリと重い黄色のリュックを背負うと、足早に二人の後を追う。服が汗を吸い込んで肌にまとわりついた。
 そんな僕たちの様子を、周りの大人たちはただ呆然と眺めている。なにせ、UFOが空から降ってきて、その中から出てきた子供3人が口げんかをしながら浜辺を去っていったなんて、誰に言っても信じてもらえるわけがない。



 そして、
 僕たちの不思議な冒険はまだ始まったばかりで。
 どこかに当てがあるわけでもなく。
 なにがあるのか知るよしもなく。
 ただ闇雲に走っていただけで。
 ただ我武者羅に足掻いていただけで。
 それでも、僕らは楽しくて。
 それだけで、僕らは楽しくて。
 
 これは、そこに彼女がいたときの話。
 これは、そこに彼がいたときの話。
 そして、ここに僕がいた頃の話だ。

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